法定代表者への消費制限措置は交代後も継続するのか?| ダン・リーグQ&A

文摘   社会   2024-07-10 11:32   日本  


Q:法定代表者への消費制限措置は交代後も継続するのか?













 A:「最高人民法院による被執行者の高額消費及び関係消費の制限に関する若干の規定」第1条及び第3条は以下の通り規定している。被執行者が執行通知書で指定された期間において、有効な法律文書で確定した給付義務を履行しない場合には、人民法院は、消費を制限する措置を取ることができ、当該被執行者の高額消費及び生活または経営に必要ではない関係消費を制限することができる(第1条)。被執行者が企業である場合には、消費を制限する措置が取られた後に、被執行者及びその法定代表者、主要責任者、債務の履行に影響を与える直接の責任者、実際の支配者は、前項で規定する行為を行ってはならない(第3条)。
 実践において直面したこのような問題としては、被執行者である企業とその法定代表者(以下「法代」)に消費制限措置を取られ、その後に企業が法代を変更したが、元の法代に課された制限措置は自動的に解除されないということがあり、多くの法代が懸念するところとなっている。そこで、以下にこの問題についての具体的な分析を提示する。
 「最高人民法院による執行活動における善意の文明執行理念の一層の強化に関する意見」第17条第2項では以下の通り規定している。被執行者である企業が消費を制限された後に、その法定代表者、主要責任者が経営管理上の確かな必要性に基づいて変更され、元の法定代表者、主要責任者が本人個人に対する消費制限措置を解除するよう申請する場合、本人が企業の実質的な支配者ではないこと、債務履行に影響を与える直接責任者ではないことを立証しなければならない。人民法院が審査により事実であると認めた場合には、解除申請を認可し、変更後の法定代表者、主要責任者に対して法に従い消費制限措置を取る。上記の人員が人民法院に申請する際には、十分に有効な証拠、及び要求に基づく書面による承諾を提出しなければならない。虚偽の証拠を提出した場合、または承諾に違反して消費行為を行った場合、人民法院は直ちに消費制限措置を回復すると同時に「中華人民共和国民事訴訟法」第111条に従い厳重に処理し、再申請を認めない。
 以上のように、裁判所の執行意見から分析すると、消費制限措置が取られた法代を変更した場合、元の法代が消費制限措置による制限責任を必然的に負い続けるわけではないということになる。制限措置の解除を申請するポイントは、元の法代が企業の実質的な支配者でないことや債務履行に影響を与える直接の人員でないことを立証することにある。現在、ある程度の規模の企業では法代に実質的な支配者ではなく専門知識を持つキャリアマネージャーを選任するケースが増えている。それにより、債務の履行に直接に関係がない法代に過度の責任を押し付けることが回避され、債務の履行に実質的な影響を持たない個人に法代身分を与えることなく合理的に責任が解除でき、キャリアマネージャーを法代に任命するリスクを低減させることができる。さらに、一部の被執行者が悪意で法代を変更して債務を逃れることも避けることができる。
 上記のほかに、現在公開されている司法文書を加味して実務面から分析すれば、「実質的な支配者」「債務の履行に影響を与える直接の責任者」についての裁判所の判断は以下のようにまとめることができる。
1. 株式の保有関係と実際の支配関係
 陝西省高級人民法院(2021)陜執復139号の執行再審決定を例にすると、裁判所は、元の法代が被執行者の筆頭株主であると同時に、被執行者の会社の経営、管理に参画していない、または当該企業の実質的な支配者ではないことを証明するその他の証拠を提供できないことにより、元の法代の消費制限措置を解除したいという申請を支持しないとしている。
 また、最高人民法院(2021)最高法執行1号の執行再審決定を例にすると、この判例では、裁判所は被執行者の元の法代が被執行者の51%の株を所有する実質的な支配株主(法人)の株主で、かつその株式保有率が60%に達しているとして、元の法代が被執行者に対する実質的な支配を形成し、債務の履行に影響を与える直接の責任者に該当すると認定し、元の法代の消費制限措置を解除したいという申請を支持しなかった。

2. 変更後の法代と元の法代との親族関係

 陝西省高級人民法院(2021)陜執復97号執行決定によると、裁判所は、元の法代に対して消費制限措置を取られた後に法代の変更を2回行っているが、1回目は元の法代の妻に変更され、2回目は元の法代の母親に変更されており、いずれも元の法代と親族関係にあり、かつ元の法代は依然として被執行者の株主であり、被執行者の債務の履行にも影響を与えているため、元の法代が債務の履行に影響していないというその他の十分な証拠を提示できない状況において、元の法代の消費制限措置を解除したいとする申請は支持しないと判断した。
 それでは、元の法代は実際にどのような方法で立証できるのだろうか?同じく判例から見てみると、(2022)粤01執行72号においては、元の法代が、国家企業信用情報公示システムに登録された公示内容に基づいて、すでに法代として登録されてなく、同時に当該会社の持分もいまは保有してなく、かつ、他の会社との労働契約と養老保険の納付明細も提示して他の雇用主体と労働関係を確立しており、元の会社(本件の被執行者)との間にはその他の実質的な支配と債務の履行に実施に影響を与える関係が存在していないことを証明したことにより、裁判所も最終的に高額消費制限を解除したいとする再審申請を支持している。
 以上を総合すると、以下の提案が有効と考える。高額消費への制限を取られた段階で被執行者である会社の法代登録情報をすでに変更している場合には、書面による是正申請を執行部門に提出できる。但し、元の法代が会社の実質的な支配者ではなく、債務の履行に影響を与える直接の責任者でもない証拠を提出しなければならない。実際に裁判所が「実質的な支配者」または「債務の履行に影響を及ぼす直接の責任者」であるかどうかを判断する基準は、主に元の法代が被執行者の株主であるか否か、被執行者を支配する持株会社の株主であるか否か、変更後の法代と元の法代とに親族関係があるかどうか、変更後の法代が会社の職務を履行しているかどうかなどが考慮される。


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