Q:個人情報を隠匿した採用社員の労働契約を解除できますか?
A:社員に隠匿された個人情報が、使用者の真意の意思に影響を与えるか、または与えるに足りるかによって決める。
「労働契約法」第8条では「使用者は労働者の採用に当たり、業務内容、勤務条件、勤務地、職業性の危害、安全生産状況、労働報酬、及び労働者が知りたいと要求するその他の状況について、労働者に対して事実のとおりに知らせなければならない。使用者は、労働契約に直接関連する労働者の基本状況について知る権利を有し、労働者は事実のとおりに説明しなければならない」と規定している。また、同法第26条第1項では「次の各号に掲げる労働契約は無効または一部無効とする。(1)詐欺、脅迫の手段により、または人の弱みにつけこんで、相手方にその真意に反する状況下で労働契約を締結させた場合、または変更させた場合。(2)......」と規定している。
以上の法律に基づいて、前述した採用社員の情報隠匿行為は、採用段階での詐欺に該当する可能性がある。ただし、隠匿された個人情報が「労働契約に直接関連する労働者の基本状況」に該当するか否かに関わっている。かつ、使用者の角度から見て、間違った認識によって意思表示が行われたという状況も必要である。即ち、使用者が隠匿された個人情報を知っていたならば労働契約の締結において不採用などの異なる考えが生じていたという状況がこれに該当する。例えば、社員が犯罪記録、重大な疾病を隠蔽したり、過去の職歴を捏造したりしたなどがあった場合、使用者による採用結果に大きく影響する可能性があり、使用者は関連状況を発見した後に「労働契約法」に準じて合法的に労働関係を解除できる。
しかし、採用時に隠匿された個人情報が結婚状況や業務に影響しない病歴などであった場合、これらの個人情報は業務上の職責を遂行するうえで直接に影響するものではないため、法律の観点からは、これらの隠匿が会社に誤った意思表示をもたらしたとは認定されにくい。従って、これらの理由で社員との労働契約を解除してしまうと違法解雇となる可能性がある。更に言及すれば、業務上の職責に影響しない個人情報をもって、使用者が採用時に知っていたならば採用しなかったと主張すると、逆に就業差別や、労働者の平等な就業権利を損害したと見なされる可能性がある。
一方、「個人情報保護法」では「個人を当事者とする契約を締結、履行するために必要がある場合、または法に従って制定した労働規則制度と法に従って締結した集団契約に基づいて人事管理を実施するために必要がある場合」、個人情報処理者は個人情報を取り扱うことができ、個人の同意を得る必要はないと規定している。つまり、「個人情報保護法」により使用者には合法的に社員の個人情報を取り扱う権利が賦与されている。ただし、同法ではさらに「個人情報の取り扱いは、合法、正当、必要、信義の原則に従わなければならず」「個人情報の取り扱いには、明確で合理的な目的を有し、かつ、取り扱う目的と直接的に関連するものであり、個人の権益に及ぼす影響を最小限に抑える方法を採用しなければならない」「収集した個人情報は、取り扱う目的を実現するための最小範囲内に止め、個人情報を過剰に収集してはならない」と要求している。従って、実際の労働管理においては、採用した社員による個人情報の隠匿を事前に予防するために、使用者は必要とする社員の個人情報に対して、合理的な範囲を慎重に判断し、収集し、保管することが役に立つ。
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