フランス文学研究から出発して豊穣な文学世界を創造した故大江健三郎氏は生前、自筆原稿を母校に寄託する意向をお持ちでした。それを受け、2023年9月、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部内に、「自筆原稿デジタルアーカイヴ」「関連資料コレクション」「書誌情報データベース」からなる「大江健三郎文庫」が開設されました。同文庫設立の準備に深く関わってこられた安藤宏教授にその経緯をお話しいただき、気鋭の大江研究家村上克尚准教授には、初期の作品「空の怪物アグイー」を対象に、草稿研究がもたらす新たな読みの可能性を具体的に示していただきます。
「加藤周一記念講演会」新シリーズについて
フランス文学、フランス文化から出発して自己形成を行ない、自国の文化や文学への重要な問題提起を行なった加藤周一の仕事(『日本文化の雑種性』、『日本文学序説』)を範として、同じく、フランス文学や西欧文化の素養を基盤に、日本文学・日本文化をめぐる独自の知見を披露している講師のお話を聞く企画です。第1回講師は、フランス文学研究から出発し、詩人、小説家、批評家として幅広く活躍されている松浦寿輝さん。今回はやや変則的に、フランス文学研究から出発した作家大江健三郎氏にちなむ文庫の設立について二人の日本文学研究者が語ります。
【講師プロフィール】
安藤宏(1958- )東京都出身。東京大学人文社会系研究科・文学部教授。専門は日本近代文学。小説を中心とする表現史、文学史。太宰治の研究で知られる。『近代小説の表現機構』(博士学位論文/岩波書店、2012年)でやまなし文学賞、角川源義賞受賞。他に『日本近代小説史』(中公選書、2015年/新訂版2020年)、『太宰治 弱さを演じるということ』(ちくま新書、2002年)、『太宰治論』(東京大学出版会、2021年)などの著書がある。
村上克尚(1978- )神奈川県出身。東京大学大学院総合文化研究科・言語情報科学専攻准教授。戦後日本文学、とくに大江健三郎、武田泰淳、小島信夫を主たる対象に、「主体性」「人間性」が自明の価値とされる風土の中で抑圧される、人間の動物性の表象に光を当てた。その成果である『動物の声、他者の声 戦後文学の倫理』(新曜社、2017年)で芸術選奨新人賞受賞。暴力や抑圧の問題をジェンダーの問題につなげる作業も行なっている。
【イベント概要】
加藤周一記念講演会「草稿から見えてくるもの―「大江健三郎文庫」開設を記念して」
講師:安藤宏(東京大学)、村上克尚(東京大学)
司会:中地義和((公財)日仏会館副理事長、東京大学名誉教授)
開催日時:2024年3月15日(金) 18:00-20:00(17:40開場予定)
会場:日仏会館ホール参加費:一般1,000円、日仏会館会員・学生無料
主催:公益財団法人日仏会館
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