生誕100年|安部公房展──21世紀文学の基軸(正在展出)

文摘   2024-12-01 19:50   新加坡  
今年生誕100年を迎えた安部公房(1924~1993)。その創作活動は、学生時代の詩作から出発し、『壁』『砂の女』などの小説や「友達」などの戯曲、写真、さらに演劇グループ・安部公房スタジオによる総合芸術の追究と多岐にわたりました。自明のはずの名前や身体、居場所が損なわれることで自己が揺らぐさまや、従来の規範が突如として転倒する世界を描いた独特の作品は、いまも国境を越え多くの読者を得ています。本展は初公開・初展示を含む約500点の資料により、時代の先端をとらえ続けた表現者・安部公房の全貌に迫るとともに、21世紀の今日において安部作品のテーマが持つ意味を問い直します。




なぜ安部公房か

   生誕100年を記念して安部公房をさまざまな角度から捉えなおしてみるという企画はなるほど文学館にふさわしい、それだけで十分ではないか、と顰蹙を買いそうな表題になってしまったが、少なくとも安部公房に関しては、それだけでは済まないところがあるのだ。どうしても「いまなぜ安部公房か?」という問いを掲げ、それに答えるというかたちを採らなければならない理由があるのである。

 それは、20世紀末から21世紀にかけてメディアが大きく変容してしまったから、という理由である。メディアすなわち人間の意識の媒体、いや人類の意識の媒体、言葉を動き回らせる媒体が、あっというまに、それも全世界的に、変わってしまったからという理由だ。安部公房にはこの変容を見越したうえでその全創作活動を展開していたとしか思えないところがある。


 三浦雅士「いまなぜ安部公房か?──漱石、賢治、安部公房という視点」(本展公式図録寄稿)から



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