日本のエリート層に「武士の姓」が多いという衝撃
身分を固定化する「社会的流動性」の低さとは
日本的精英层中“武士姓氏”比例高得令人震惊
什么是导致身份固化的“社会流动性”低下
古代中国の封建制度やインドの伝統的なカースト制度、あるいはヨーロッパ中世の封建制度のもとでは、人々の社会的な地位は生まれながらに決まっていた。
在古代中国的封建制度、印度的传统种姓制度以及欧洲中世纪的封建制度下,人们的社会地位往往由出生决定。
親の社会的身分が子に受け継がれたので、社会的流動性は限られたものだった。
由于子女继承父母的社会地位,社会流动性受到了极大的限制。
現代の資本主義社会に暮らすわたしたちの大半は、そのような固定化された階級社会におぞましさを覚える。
大多数生活在现代资本主义社会的人,对这种固化的阶级社会感到厌恶。
今の社会では、政治信条に関係なく、社会的流動性、つまり誰でも「出世」できる状態が尊ばれている。
在当今社会,无论政治信仰如何,社会流动性,即任何人都有机会“出人头地”,被视为一种普遍的价值。
とはいっても現実には、親と子のあいだに社会的地位の相関がどれぐらいあるかは、国によってかなり違う。流動性が世界で最も高いのは北欧諸国であり、逆に最も低いのは南米の国々だ。
然而,现实中,父母和子女之间的社会地位相关性在不同国家之间差异显著。北欧国家的社会流动性最高,而南美洲国家则最低。
その原因は、経済的な不平等(貧富の格差)と流動性とが密接に結びついていることによる。これははしごの喩(たとえ)で考えるとわかりやすい。はしごの段と段の差が経済的な不平等を、はしごの上り下りのしやすさが社会的流動性を表す。段と段の差が大きければ、はしごの上り下りはしにくくなる。
其原因在于,经济不平等(贫富差距)与社会流动性密切相关。我们可以用梯子来打个比方:梯子阶梯之间的差距代表了经济不平等,而攀爬梯子的难易程度则反映了社会流动性。如果阶梯之间的差距过大,攀爬就会变得困难。
このような貧富の格差と流動性の相関関係を経済学では「グレート・ギャツビー曲線」と呼ぶ。南米では、北欧より経済的な不平等が大きいので、そのぶん流動性も低い。
在经济学中,这种贫富差距与社会流动性之间的相关关系被称为“了不起的盖茨比曲线Great Gatsby Curve”。由于南美洲的经济不平等程度高于北欧,因此其社会流动性也相对较低。
ここまでは、1世代間(つまり親と子)の社会的流動性の話だったが、別の手法を使えば、多世代間の流動性を見わたして、支配層が固定化していないかどうかも調べられる。
到目前为止,我们主要讨论了一代人之间(即父母与子女)的社会流动性。然而,通过其他研究方法,我们还可以考察多代之间的社会流动性,以了解统治阶层是否已经固定化。
社会的流動性の長期的な傾向を明らかにするため、経済学者グレゴリー・クラークはめずらしい姓に着目して、社会的な身分が固定化していないかどうかを調べている。
为了探究社会流动性的长期趋势,经济学家格雷戈里·克拉克(Gregory Clark)通过研究罕见姓氏,试图了解社会地位是否长期保持稳定。
ピープスという姓を例に取ろう。17世紀に英海軍の書記官を務め、詳細な日記を残したことで知られるサミュエル・ピープス(1633~1703年)の姓だ。
以“皮普斯Pepys”这个姓为例。这是17世纪英海军书记官、以留下详细日记而闻名的塞缪尔·皮普斯(1633-1703年)的姓氏。
過去5世紀にわたり、ピープスという姓は一般母集団より20倍以上高い割合で、オックスフォード大学とケンブリッジ大学に入学してきた。
在过去的五个世纪里,拥有“皮普斯”姓氏的人进入牛津大学和剑桥大学的比例,比普通人群高出20倍以上。
資産価値の閲覧可能なデータを見ても、ピープス姓は英国人の平均より5倍以上多くの財産を子孫に残している。
通过可查阅的资产数据显示,拥有“皮普斯”姓氏的人群平均留给后代的财富,是英国人平均水平的五倍以上。
ひとつの姓がこのようにエリート層に存続しているのは、社会的流動性が極端に低い証拠だと考えられる。
一个姓氏长期占据精英阶层,表明社会流动性极低。
100年経ってもエリート一家?
100年后,他们依然是精英家庭吗?
めずらしい姓がエリート層に存続している例は、ほかの国でも見られる。米国の税務当局が1920年代初頭に高額所得者の氏名を発表した。
在其他国家,我们也能找到类似的例子:一些特殊的姓氏长期与精英阶层联系在一起。例如,1920年代初,美国税务机关公布了一份高收入者名单。
それから100年後、それらと同じ姓を持つ者は、医師や弁護士になる割合が平均で3~4倍高い。
一个世纪后,这些姓氏的持有者成为医生或律师的比例,比平均水平高出3到4倍。
中でもカッツという格式の高い姓を持つ米国居住者は、6倍も高い割合で医師や弁護士になっている。
其中,“卡茨”这个姓氏在美国尤为突出,拥有此姓氏的人成为医生或律师的比例是普通人的6倍。
日本では、武士の姓は1868年の明治維新以前まで遡る。現在、それらの姓を持つ者は一般よりも4倍以上高い割合で、医師、弁護士、学術書の著述家になっている。
在日本,许多武士的姓氏可以追溯到1868年明治维新之前。如今,拥有这些姓氏的人成为医生、律师或学者,其比例比普通人高出4倍以上。
中国では、19世紀の清朝のエリート層に多かった姓を持つ者が、やはり一般よりも高い割合で、現在の企業の取締役や政府の役人に名を連ねる。
在中国,拥有19世纪清朝精英阶层常见姓氏的人,较普通人在当代企业董事会和政府机构中占据了更高的比例。
チリでは、高収入の職業に従事する者には1850年代の地主階級に多かった姓を持つ者がいまだに多い。
在智利,从事高收入职业的人群中,仍有相当一部分人拥有19世纪50年代地主阶级的姓氏。
スウェーデンでは、17世紀から18世紀にかけて、「高貴な姓」が定められた。現在、それらの姓を持つ者は、医師になる割合が2倍、弁護士になる割合が5倍ふつうより高い。
在瑞典,17至18世纪曾明确规定了一批“贵族姓氏”。如今,拥有这些姓氏的人成为医生或律师的概率,分别是普通人的2倍和5倍。
社会的な身分は、わたしたちの想像以上に固定化している。10世代にもわたって受け継がれることすらある。
社会地位的固化程度远超我们的想象,有时甚至能延续十代。