中国の若者の間で近年、京劇の人気が高まりを見せているが、その理由は何なのだろうか?若者たちは、「京劇はとても美しい、ただそれだけ」としている。近年、京劇の素晴らしさが掘り起こされ、学校の授業や劇場、テレビやスマホなどを通して紹介され、若者の心を鷲掴みにしている。
若手俳優や観客から垣間見える京劇の未来
天津の旧市街エリアに、中国南方エリア独特の雰囲気を漂わせる清代の建築物「広東会館」がある。その中には、100年以上の歴史を誇る壮麗な木造の舞台が据えられており、今でも京劇の公演が行われている。
天津市の広東会館(撮影 · 趙子碩)
広東会館は2012年から、天津京劇院青年人材実践拠点として、京劇俳優を目指す多くの若手たちがその舞台に立って、技を磨いている。これまで12年の間に、400回以上の公演が行われ、優秀な若手京劇俳優50人以上を輩出してきた。俳優たちの平均年齢は27歳。
京劇にとって、若手俳優の育成だけでなく、若年層の観客の育成も必要事項となっている。広東会館の観客の少なくとも半数は中年・若年層が占めているという。
中国人民大学文学院の張一帆講師は、京劇の大ファン。観劇歴22年にわたり、多くの公演パンフレットを各ケースに分けて収集してきたという。2009年に、中国人民大学の教壇に立つようになって以来、張講師は、大学内で京劇を目にしたり、耳にしたりすることがますます増えていることを肌で感じてきた。「それは、2008年に、京劇を小中高校の授業に取り入れるテスト事業が始まったことと関係がある。小中高校生にとって、京劇が身近な存在となり、それを愛する気持ちを抱いたまま、大学に進学するようになっている」と分析する。
インターネットの後押しを受け、京劇に触れる人がさらに増加
2020年、天津京劇院の若手俳優である閆文倩さんは、ショート動画プラットフォームのアカウントを開設し、若者好みのスタイルで、京劇のPRと普及に取り組むようになった。練習の舞台裏やバッチリメイクした劇中写真、メイクアップの解説といったショート動画がアップされ、フォロワーはどんどん増えていった。
閆さんは、フォロワーから寄せられるコメントを普段からチェックしているといい、「称賛や励ましの言葉は、大きな収穫。京劇をPRするという決意がさらに固まる」としている。
京劇(資料写真)
杭州師範大学・文伝学院の中国伝統演劇学科の郭梅教授は、「現在、ニューメディアや新技術の影響を背景に、伝統文化は全く新しい伝承と発展のチャンスを迎えている。言い換えれば、まさにニューメディアを活用して、伝統演劇を紹介していくべき時だということだ」との見方を示す。
閆さんは、「京劇は芸術性が高く、鑑賞するハードルも高いものの、落ち着いて、じっくりと楽しみ、そのセリフにもじっくりと耳を傾ければ、それほど難しいとは感じなくなる」と語る。
「実際には、京劇の内容を完全に理解できていないとしても、その素晴らしさを楽しむ妨げにはならない」と話す国家京劇院の若手俳優である郭霄さんによると、「鬧天宮」や「三岔口」、「雁蕩山」といった海外でもよく上演される演目は、どれも武術アクションをメインとしており、言葉が分からない外国人でも楽しく鑑賞することができるという。
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