09.29 早读 | 世界にひとつだけの本+第12話「母と二人旅」 ——Emmy老师

教育   2024-09-29 08:08   日本  

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Emmy

世界にひとつだけの本

因早早读时间特殊,偶尔存在换课情况,课表仅供参考



あわただしく過ぎていく時の波にふと足元をすくわれそうになったとき、必ず、ひもとく本があります。

その本には、ある女性の人生が描かれています。

その女性の名前は、月原加奈子 38歳 旅行会社勤務。

彼女の人生は、何処にでもある、ごく普通の人生。

でも、本の中の彼女に出会うと、心の湖に波紋が幾重にも広がるように、ゆっくりと、優しい言葉が満ちていきます。

今日は、どんな彼女に会えるでしょうか?




第12話  母と二人旅

 世界にひとつだけの本 

かなりの距離を、母は歩いた。私の方が先に音をあげた。

「母さん、少し休もうよ」

「ここは、二万五千人の人が、三十年余りかけて作ったんだって。もったいなくて、休めないよ」

のちに起こる悲劇も知らずに、母はガンガン歩き続ける。

日傘の上で陽の光が躍っていた。

カンボジアのシェムリアップ。その埃だらけの田舎道を歩いていたら、ふと、幼い頃の記憶がよみがえってきた。

あれは小学二年の夏。私は、夏の間だけ、母の実家に預けられた。

父が無言で田舎道を歩く。私は、父の足元から舞い上がる砂埃を見ながら、必死について歩く。

母が体を壊し、弟の面倒を見るのが精一杯だった。父はこれから長期の出張に出なくてはならない。長女である私は、祖母のもとに送られることになった。親元を離れるのは初めてだった。

奈良と三重の県境。陽は早く落ち、心細さはつのる。聞き慣れない方言に身を硬くした。もしかしたら、自分は二度と両親のもとに帰ることができないのではない。

そんな不安がヒグラシの声とともにグルグル回る。私は、父が迎えにきてくれるのを、毎日毎日、待っていた。

異国の地カンボジアで、あの夏を思い出すとは思わなかった。

私と母は、灼熱のシェムリアップから、喧騒のホーチミンに向かった。飛行機の窓から、夕闇に包まれた田舎道が見えた。

どこまでも続く真っすぐな赤い道。






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