★ 中村Radio・第182回 ★
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朗読者:中村紀子
作品:『「自分らしさ」はいらない』松浦弥太郎
BGM:The O'Neill Brothers Group - Hey Diddle Diddle
松浦弥太郎
Matsuura Yataro
『「自分らしさ」はいらない』
松浦弥太郎
はじめに
「自分らしく生きよう」
「自分らしさを大切に」
「自分らしさを失わずにいたい」
こんな意識をもつ人はたくさんいますし、それは当然のごとく、正しいことだととらえられています。
しかし、はたして、そうでしょうか?
朝、目が覚めたら自分らしい服を着て、自分らしくちょっとこだわりのコーヒーを飲み、自分らしい会社に行って、自分らしさを発揮しながら働く——。
まるでかっこいいテレビコマーシャルのようですが、僕はとても不自由な気がします。きゅうくつでたまらない、とすら思います。仮に、ドリップ式でじっくり淹れたコーヒーが自分らしさの一端だとしたら、駅の自販機の缶コーヒーは、「らしくない」のでしょうか?
人は、そんな単純なものではないはずです。
ある日はていねいに淹れたコーヒーをおいしく味わい、ある日は甘すぎる缶コーヒーをホームで一気飲みする。どちらであろうと自分らしくいられる人がすばらしいし、自分もそうありたいと願っています。
「個性を大切にして、自分らしくありたい」という思いは美しい呪縛みたいなもので、必要以上に人を力ませます。
力むことと、一生懸命になることとは違います。
肩に力が入った状態で、すてきなことはできません。いい仕事も、おいしい料理も、すこやかな人間関係も、かたちにならないのではないでしょうか。
何もしないうちから「自分らしくやろう」と思った時点で不自然になり、結局、なにもできなくなってしまいます。
「どうすれば自分らしいのか?」などという意識を捨てて、夢中でやる。
自分らしさにこだわる余裕などないくらい、没頭し、楽しむ。
そのはてにある実りこそ、自分らしさではないだろうかと、僕は考えています。
つまるところ、自分らしさとは、結果論です。
自意識を捨てて、精一杯やったとき、他人が「あなたらしい」と言ってくれるもの。それが本当の自分らしさだと思うのです。
そうであれば、自分が思う「自分らしさ」は邪魔者にすぎません。
「何かを始めたいなら、『自分らしさ』など捨てたほうがいい」
このルールを発見した時、僕は自由になりました。
「なんにでもなれる。なんでもできる」
可能性が無限にひらけてきたようで、心がおどりました。
こんなことを書いていますが、僕もかつては、自分らしさにこだわり続けていました。
「このやり方は、僕らしくない」
「こんな文章を、僕は書かない」
若い頃はそうした思いにとらわれ、自分で自分を縛りつけていたのです。
もしも、「自分らしさを捨てる」というルールを発見せずにいたら、僕は何ひとつ始められず、立ち止まったままだったことでしょう。
自分らしさを捨てようと決めてからも、人にずいぶん、「松浦弥太郎らしさ」について言われました。
わかりやすい例をあげれば、キャリアについて。
「エッセイ以外の本を書くなんて、弥太郎らしくないよ」
「『暮しの手帖』の編集長?松浦さんらしくない」
「ウェブメディアは松浦弥太郎のイメージと違う」
僕としてはいずれも、「世の中の役に立つことを精一杯やる」と決めて飛び込み、努力しているだけなので、そうした声が不思議でした。
書店も雑誌もウェブメディアも、その先にいる人のため。
「どうしたらみんなに喜んでもらえるか?」という新たなるチャレンジに夢中で、それが自分らしいかどうかなど、僕にとってはどうでもよかったのです。
不思議なことに、信じて続けていると、いつのまにかまわりの人にとっても、違和感がなくなっていくようでした。それどころか、どのキャリアについても、「松浦さんそのもののお仕事ですね」などとほめていただくまでになったのです。
「自分らしさを捨てれば、自分らしさが更新され、自分らしさが広がる」
僕のルールブックに、新たな法則が加わりました。
これは、仕事に限った話ではありません。
身だしなみ、立ち居振る舞い、考え方、生き方、人とのつき合い方。
いつしか似合わなくなったいつかの「自分らしさ」を捨て、今の自分が良いと信じたものを選ぶ。そうすることで、新しい自分らしさができていきます。
この本は、自分らしさを捨てて、可能性を広げるためのヒント集です。「自分らしさ」にこだわりすぎる人は、ルールに縛られていることが多いので、具体的には心のつかい方について書いていきます。あなたのくらしと仕事に、ぜひ役立てていただきたいと思います。
今の世の中は、どんどん変わっていきます。
自分らしさを捨て、アップデートしていかないと、置いてきぼりになり、途方にくれる、そんなこわさも秘めています。
逆に言えば、自分らしさを捨てて自由になれば、あらゆる可能性が広がる。
一生、新たなチャレンジを続けられる。
僕はそう信じています。
中村Radio——喜马拉雅FM
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