天達共和ニュースレター(No. 10)2024

学术   2024-11-08 18:23   北京  


目录

天達共和及び知財部ニュース速報

天達共和法律事務所東京オフィス設立のお知らせ


天達共和の楊斌博士が中国法学会知的財産権法学研究会の理事に選出


最新の知財動向

中国標準化研究院が「標準必須特許発展報告(2024年版)」を発表


第13回中国知的財産権年次大会が北京で開催


代表事例速報

賠償請求額2800万元の特許権侵害訴訟が再審請求中、原告と被告の特許紛争は二地域に跨り、四事件に関係する


ポケモン社が中国で一審勝訴、著作権侵害をした国産ゲームに対し1.07億元の賠償命令


TOPICS

専ら科学研究と実験を目的とした特許の使用が、特許権侵害とみなされないという原則の法的理解と適用


天達共和ニュースレター

2024年10月刊

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天達共和及び知財部ニュース速報


天達共和法律事務所東京オフィス設立のお知らせ


2024年9月1日、天達共和法律事務所東京オフィス(以下「天達共和東京オフィス」といいます)が正式に開設されました。


天達共和は、中国国内において最も早く日本に関わる法律業務に取り組んできた法律事務所の一つであり、弊所の日本業務部は、中国国内において日本に関わる法律業務に取り組む最大規模の弁護士チームの一つです。「天達共和」は30年にわたって、日中経済貿易取引において、日系企業の中国進出に対し、フルライフサイクルの企業法務、国際貿易と通商、知的財産権保護、コンプライアンス対応、労働法を含む法律相談等の総合的なサービスを提供し、お客様から多くのご信頼をいただいています。現在、天達共和には、日本語に精通する40名以上の弁護士と弁理士(その内の15名はパートナー弁護士又は顧問を務めています)、10名以上の弁護士と弁理士の両資格保持者、日本人弁理士及び日本人翻訳者等のスタッフが在籍しています。


30年を掛けて力を蓄え、周到な準備を経て、天達共和東京オフィスは、2024年秋にグランドオープンする運びとなりました。東京オフィスは、香港、バンクーバーに次ぐ3番目の海外支所となります。この東京オフィス設立を機に、日本向けリーガルサービスについて更に幅広く探求し、向上を絶えず図り続ける「創意工夫」を支えに、一体化したコラボレーションを行い、最先端の専門知識を活かして、更に全面的、専門的で、日本のお客様の期待に応えるリーガルサービスを提供していきた いと考えております。






01. 東京オフィスの設立経緯


日本法律規定に基づき、天達共和東京オフィスの設立に当たり、日本において、日本外国法事務弁護士を1名登録または雇用しなければならないことになっています。


2024年5月9日、天達共和法律事務所の張和伏弁護士は、日本国法務大臣より交付された「外国法事務弁護士証書」を取得し、日本国法務省は同日に「官報」に当該情報を掲載しました。2024年9月1日、天達共和東京オフィスは、日本東京弁護士協会及び第二弁護士協会での登録手続を無事に完了いたしました。


02. 東京オフィスの周辺環境概況


天達共和東京オフィス所在地は、東京都千代田区有楽町1-13-2 第一生命日比谷ファーストの12階です。



天達共和東京オフィスの周囲は美しい環境で、景色もとても魅力的です。


03. 東京オフィスの連絡先


正式名称:

天達共和外国法事務弁護士事務所

所在地:

〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-13-2第一生命日比谷ファースト12階

電話番号:03-6892-5570

FAX:03-6892-5570

メールアドレス:tokyo@east-concord.com

アクセス:


(1)JR「有楽町」駅から徒歩約2分

(2)東京メトロ日比谷線・千代田線・都営地下鉄三田線「日比谷」駅から徒歩約1分

(3)東京メトロ有楽町線「有楽町」駅から徒歩約1分

 ※ 地下鉄の最寄りの出口は、B1又はB2です


天達共和の楊斌博士が中国法学会知的財産権法学研究会の理事に選出


過日、中国法学会知的財産法学研究会は第六回会員代表大会を開催し、新しいリーダーや常務理事、理事を選出しました。開幕式では、中国法学会の党組書記で、全国人民代表大会常務委員会委員、憲法・法律委員会副主任委員の王洪祥氏が講演を行い、全国人民代表大会常務委員会法制工作委員会副主任の黄薇氏、科学技術部党組メンバーで副部長の陳家昌氏、中国人民大学党委員会常務委員で、常務副校長の朱信凱氏が挨拶をしました。


会議では、中国法学会知的財産法学研究会の新しい理事が選出され、陶凱元氏が会長、郭禾氏が常務副会長、曹新明氏、単暁光氏などが副会長、張広良氏が秘書長に選ばれました。また、天達共和の管理パートナーで、武漢オフィス管理委員会の主任の楊斌博士が理事に選出されました。


陶凱元氏は、新しい理事会は中国法学会の党組織の強力な指導の下で、党の全面的な指導を守り、理論と実践の深い統合を維持し、問題指向を貫き、知的財産法学研究会をより強力で活力に満ちたものにし、研究会の「知恵の団体」「思想庫」「人材庫」としての役割を十分に発揮し、全面的な法治国家の新たな道のりにおいて新たな責任を果たし、新たな成果を実現することを目指すと強調しました。


楊斌博士は、今後、理事としての責任を積極的に担い、専門的な強みを十分に活かし、知的財産分野の発展動向に密接に注目し、実情に基づいて、正道を守りつつ革新を追求し、中国のさらなる全面的な改革と中国式現代化の推進に知恵と力で貢献していく意向を表明しました。


最新の知財動向


中国標準化研究院が「標準必須特許発展報告(2024年版)」を発表


中国標準化研究院は、国家レベルの標準化研究機関としての機能を十分に発揮し、国際・国内標準必須特許に関する政策制度と実践を長期的に観察・分析した結果、300万件以上の標準データに対するマイニング・分析を基に「標準必須特許発展報告(2024年版)」(以下「報告」と称する)を作成した。


この報告は、政府関連部門、社会団体、高等教育機関、研究機関、企業、および標準必須特許関連業務に従事する人々を対象とし、近年の国内外における標準必須特許に関する重要政策、関連ケース、データを分析した。目的は、標準必須特許の全体的な発展状況を包括的、体系的、客観的に示し、関係者の標準必須特許に対する認識と理解を深め、理論や政策をよりよく把握し、先進的かつ適用可能な技術革新成果を標準に迅速に取り入れ、標準策定プロセスにおける知的財産権保護を強化し、革新成果の産業化を促進し、新たな質の生産力の育成と発展により良く貢献することにある。



報告は6つの部分からなり、主な内容は以下の通りである。


第一部分は標準必須特許概念の内包と主体行為を明らかにした。革新成果の転化と市場活動などの角度から標準必須特許の概念を定義し、標準必須特許の形成、ライセンス交渉から紛争解決までの各段階で標準必須特許に関わる主体行為を紹介し、報告の後続内容の基礎を築いた。


第二部分は代表的な国際組織の標準必須特許に関する政策と実践を整理した。指導原則、現在の実践及び戦略方向の3つの側面から、世界知的財産権機関(WIPO)の標準必須特許の戦略の主な内容を紹介した。国際標準化機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)及び国際電気通信連合(ITU)の三つの国際標準組織の政策動態を追跡し、全体的な発展、国別状況及びカバー分野などから関連標準必須特許データに対して統計と分析を行った。


第三部分は主要国(地域)の標準必須特許に関する政策を分析した。米国、EU、英国、日本、韓国等の主要国(地域)の標準必須特許に関する最新の法規政策、行政及び司法状況を整理し、政策の変遷を図式化し、ガバナンス動向及び発展傾向を示した。


第四部分は標準必須特許ライセンスの実践と紛争解決の新しい傾向を概説した。無線通信、音声・映像等の分野のライセンス実践及び紛争解決事例から、標準必須特許ライセンス取引主体の多元化、実務の広範化、紛争解決のグローバル化という新しい傾向を詳しく解説した。


第五部分は中国の標準必須特許の政策と実践を総括した。中国の重要な政策文書における標準必須特許に関する業務の展開を紹介し、中国の標準必須特許の各段階における制度をまとめ、中国の国家基準と団体基準における特許に関わる具体的な状況と傾向を数量化して分析した。


第六部分は標準特許の協同革新による新質生産力の促進について展望を行った。関連状況を分析し、標準必須特許の5つの発展傾向を提示し、政府部門、市場主体、科学研究機構の関連業務の推進について提案をした。


出典:中国標準化研究院ウェブサイト



第13回中国知的財産権年次大会が北京で開催


9月13日、「知的財産権は勢いをつけ、新たな質の生産力に力を与える」というテーマを掲げ第13回中国知的財産権年次大会が北京で開催された。39カ国と4つの国際組織から参加者が集まり、知的財産権の法治構築、保護、活用、国際協力などのトピックについて意見交換が行われた。



国家知的財産局局長の申長雨氏は、「新たな質の生産力を発展させるためには、科学技術革新が生産性の水準を高める上で重要な役割を果たさなければならない」と述べた。また、同氏は、知的財産権の法治保障を強化し、知的財産権が高水準の革新をより良く促進し、産業の革新、発展方式の革新、制度やメカニズムの革新を加速する上で重要な役割を果たすように努め、勢いをつけ、新たな質の生産力に力を与えるべきだと強調した。


世界知的財産機関(WIPO)の事務局長の鄧鴻森氏は、「世界の知的財産権の状況は過去数十年にわたり大きな変貌を遂げたが、中国がこの変貌を牽引し、特許、商標、意匠の出願で世界をリードした。このような刺激的な新潮流を前に、WIPOはその活動を通じてイノベーションをさらに後押ししていく」と述べた。


データによると、2023年末までに中国本土(港澳台を除く)は、特許保有件数は401.5万件に達し、有効特許件数が400万件を超えた世界初の国となり、また、PCT国際特許出願件数は数年連続で世界一位となった。世界知的財産機関が発表した「グローバルイノベーションインデックス報告」では、中国は第12位となり、世界トップ100のテクノロジークラスターの数は2年連続で世界1位となり、新たな質の生産力の発展を強力に後押ししている。


今年の大会では、1つのメインフォーラムと11の分科フォーラムがあり、参加者は知的財産権のホットな話題に焦点を当てて交流を行った。また、大会ではロードショーや発表会など多様な形式で知的財産権分野の最新成果が紹介された。


出典:人民網


代表事例速報


賠償請求額2800万元の特許権侵害訴訟が再審請求中、原告と被告の特許紛争は二地域に跨り、四事件に関係する


9月23日、江蘇博迁新材料股份有限公司(以下「博迁新材」)は、子会社の訴訟の進捗を発表した。発表によると、博迁新材の全額出資子会社である寧波広新ナノ材料有限公司(以下「広新ナノ」)と台州市金博新材料有限公司(以下「金博新材」)の特許権侵害訴訟は、再審請求立件段階にある。


2020年12月、広新ナノは浙江省寧波市中級人民法院(以下、「寧波中院」)から応訴通知書【案件番号:(2020)浙02知民初452号】を受け取った。金博新材は、自社が特許ZL201611085580.4号の排他的被許諾者で、広新ナノがその許可なく上述の特許技術を実施して、自社の合法的権利を侵害したことを理由に訴えた。


金博新材は、寧波中院に対し、広新ナノが特許ZL201611085580.4号を侵害した製品の生産および使用を直ちに停止し、係争製品の全ての在庫を破棄し、また、経済的損失と、侵害を差止めるために支払った合理的な費用として合計100万元を賠償するよう命じることを求めた。審理期間中、金博新材は訴訟請求の変更を申し立て、請求額を100万元から2800万元に引き上げた。


2021年12月、寧波中院は一審判決を下し、金博新材の訴訟請求を棄却した。


金博新材は一審判決を不服として、翌月に最高人民法院に上訴し、寧波中院の一審判決を取り消し、金博新材の全ての請求を支持するよう求めた。2024年3月、最高人民法院は二審判決を下し、上訴を棄却し原判決を維持した。現在、金博新材は最高人民法院の二審判決を不服として、再審請求中である。


訴訟の経緯 


双方の特許権紛争は二地域に跨り、四件の案件に関係する。


(2020)浙02知民初452号事件のほか、金博新材は同時に寧波中院へ、広新ナノが実用新案ZL201621306206.8を侵害したことを理由に訴え、広新ナノが直ちに侵害行為を停止し、経済損失及び合理的費用100万元(その後2800万元に引き上げた)を賠償することを請求した【事件番号:(2020)浙02知民初455号】。


案件の審理過程は概ね同様で、即ち、寧波中院は一審判決を下し、金博新材の訴訟請求を棄却したが、金博新材は一審判決を不服として、最高人民法院に上訴した。ただし、2022年8月に金博新材は上訴取下げを申請し、最高人民法院は、金博新材が自動的に上訴取下げをしたため、一審判決が有効となり、訴訟が終了したと最終的な裁定を下した。


上記二つの特許・実用新案について、金博新材は江蘇省南京市中級人民法院へも提訴した。


2020年11月から12月にかけて、金博新材は江蘇省南京市中級人民法院(以下「南京中院」という)へ、博迁新材がその実用新案ZL201621306206.8号【事件番号:(2020)蘇01民初3293号】および特許ZL201611085580.4号【事件番号:(2020)蘇01民初3294号】を侵害したとして訴え、それぞれ580万元の賠償を請求した。


(2020)蘇01民初3293号事件において、金博新材は審理期間中に賠償額を5628万元に変更した。南京中院は審査の結果、金博新材の訴訟請求を棄却する判決を下した。同月、金博新材は南京中院の一審判決を不服として、最高人民法院に上訴した。最後に、2022年8月に金博新材は上訴取下げを申請し、最高人民法院は、金博新材が自動的に上訴取下げをしたため、一審判決が有効となり、この訴訟が終了したと最終的な裁定を下した。


(2020)蘇01民初3294号事件において、南京中院は一審で金博新材の訴訟請求を棄却した。金博新材は一審判決を不服として、最高人民法院に上訴したが、2024年3月、最高人民法院は上訴を棄却し、原判決を維持するという二審判決を下した。


出所:IPRdaily


ポケモン社が中国で一審勝訴、

著作権侵害をした国産ゲームに対し1.07億元の賠償命令


9月13日、ポケモン社の公式サイトでは「『ポケット妖怪復刻』(中国名「口袋妖怪:复刻」)が当社の著作権を侵害し、不正競争を行った事件の一審判決に関する公告」が発表された。当該公告によると、法院は広州麦馳ネットワーク科技有限公司に対し、ポケモン社の経済的損失および権利保護の合理的費用として合計1.07億元を賠償することを命じた。


公告の内容


株式会社ポケモン(以下「当社」という)は、中華人民共和国の関連法律に従い、原告としてスマートフォンゲーム「ポケット妖怪復刻」(別名「ポケットの旅」、以下「係争ゲーム」という)が当社のポケモンシリーズゲーム(以下「当社ゲーム」という)の著作権を侵害し、不正競争行為に該当することを理由に、2021年12月3日に広州麦馳ネットワーク科技有限公司、深圳市阿斯卡徳情報技術有限公司、深圳市値尚互動科技有限公司、中南紅文化グループ股份有限公司、霍爾果斯方馳ネットワーク科技有限公司(以下「被告会社」と総称)に対して訴訟を提起しました。最近、広東省深圳市中級人民法院は本件について一審判決を下しました。


該判決は下記の通りです。係争ゲームと当社ゲームは、中核的要素であるポケモンキャラクター、ゲームの主人公、マップ等が対応し、類似し、また、ゲームの要素の組合せにより形成された複数の要素の体系も酷似し、あるいは同一で、更に、複数の数値体系の設計も同一であることから、双方ゲームの具体的なストーリーの内容は、実質的な類似性を構成しています。係争ゲームは、当社ゲームの著作権(「著作権法」第10条第1項第5号、第12号及び第14号に規定される複製権、情報ネットワーク伝播権及び翻案権を含む)を侵害しました。また、係争ゲームの運営・宣伝は、「不正競争防止法」第2条及び第8条第1項に違反し、不正競争に該当します。


以上を踏まえ、一審法院は、広州麦馳ネットワーク科技有限公司が、当社の経済損失および権利保護のための合理的な費用合計1億700万人民元を賠償し、また、深圳市阿斯卡徳情報技術有限公司、深圳市値尚互動科技有限公司、霍爾果斯方馳ネットワーク科技有限公司が、広州麦馳ネットワーク科技有限公司の前記賠償額の一部を連帯して賠償せよと判決しました。


現在、広州麦馳ネットワーク科技有限公司と霍爾果斯方馳ネットワーク科技有限公司は、上記の一審判決に対して控訴しましたが、当社は、引き続き自らの正当な権利利益の保護を図るとともに、二審についても十分に準備し、積極的に対応してまいりますので、ここにお知らせいたします。


当社および子会社のポケモン(上海)玩具有限公司は、常に知的財産の保護を重視しており、知的財産権を尊重し、良好な市場環境を創出するための各界の努力に心より感謝申し上げます。今後もポケモンのイメージが適切に使用されるよう努め、知的財産権が侵害されることがないよう、断固として権利を守り、より健全で秩序あるビジネス環境を構築し、消費者の皆様により良い品質の商品とサービスを提供し続けるよう努めてまいります!



TOPICS探求



専ら科学研究と実験を目的とした特許の使用が、特許権侵害とみなされないという原則の法的理解と適用


はじめに


仮想的な相談事例として、潜在的な顧客に対して自社の生産能力を証明するために、ある特許を利用し、サンプルを加工してから、そのサンプルを無償でその潜在的な顧客に見せたり、提供したりする場合、特許法上の「専ら科学研究および関係特許の実験的使用を目的とするものであり、特許を侵害するものではない」と主張して、非侵害の抗弁を行うことができるかという問題について、関連法令、学説、関連判例などを、以下に紹介する。


一、関連法令


1.「中華人民共和国特許法」(2020年改正)

第75条4項 次の各号のいずれかに該当するときは、特許権侵害とみなさない。(4)専ら科学研究と実験のために関係特許を使用する場合。


2.「北京市高級人民法院特許権侵害判定ガイドライン(2017年)」


第115条:科学研究、実験の過程において、特許権利者の許諾を得ずに、関連する特許製品を製造、使用、輸入、或いは特許方法を道具、手段などに使用して、他の技術の研究・実験を行う、或いは特許技術案の事業予測などの研究を実施する場合、その結果が特許技術と直接の関係のない行為は、特許権侵害行為を構成する。


第135条:専ら科学研究と実験のために関係特許を使用する場合、特許権侵害とみなさない。


専ら科学研究と実験のためとは、特許技術案自体に対して特に実施される科学研究および実験をいい、その目的は、他人の特許技術を研究、検証、改良することで、既にある特許技術の基礎に新しい技術成果を生じさせることである。


本条第1項の関係特許を使用する行為には、当該研究・実験者が自ら関係特許製品を製造、使用、輸入し、或いは特許方法を使用する行為を含み、他人が当該研究・実験者のために関係特許製品を製造、輸入する行為も含む。


3.「北京市高級人民法院による『北京市高級人民法院特許権侵害判定ガイドライン』の公布に関する通知」


第123条:専ら科学研究と実験のために関係特許を使用する場合、特許権侵害とみなさない。


専ら科学研究と実験のためとは、特許技術案自体に対して特に行われる科学研究および実験をいう。


特許技術案自体に対して科学研究、実験を行うことと、科学研究、実験において特許技術案を使用することとを区別しなければならない。


(1)特許技術案自体に対して科学研究、実験を行う目的は、他人の特許技術を研究、検証、改良することで、既存特許技術を基にに新しい技術成果を生じさせることである。


(2)科学研究、実験の過程において特許技術案を使用する目的は、他人の特許技術を研究、改良するためではなく、特許技術案を手段として他の技術の研究・実験を行うこと、又は特許技術案の事業予測を研究すること等であり、その結果が特許技術と直接関係しない行為である。このような行為は特許権侵害を構成する。


本条第1項における関係特許を使用する行為には、当該研究・実験者が自ら関係特許製品を製造、使用、輸入し、又は特許方法を使用する行為が含まれ、他人が当該研究・実験者のために関係特許製品を製造、輸入する行為も含まれる。


二、関連する学術的観点


「中国特許法詳解」尹新天、知的財産権出版社、第816-819頁には、関連内容が記載されている:


本条第(四)項にいう「専ら科学研究及び実験のため」とは、特許を取得した技術そのものに対する科学研究及び実験を行うことをいう。可能な状況は次のとおりである。


(1)研究及び実験を通じて、請求の範囲で保護を請求する特許技術が特許明細書に記載された発明目的を達成できるか否か、期待される発明効果を生み出すことができるか否かを判断する。


(2)研究と実験を通じて、特許技術を実施するための最適な方案を決定する。


(3)研究と実験を通じて、専門技術をどのように改善するかを検討する。


以下の行為は、特許技術自体に対して行われた研究および実験行為ではないとみなされるべきである。


(1)特許技術そのものを対象とするのではなく、特許技術を手段として利用して別の研究・実験を行うこと。


(2)特許技術そのものではなく、特許技術実施の他の側面について研究・実験を行うこと。


(3)特許技術そのものではなく、特許技術実施の事業予測について研究・実験を行うこと。


適用主体については、専門の科学研究機関に限定されず、いかなる機関、いかなる個人でも行うことができる。


三、関連事例


(一)侵害と認定された判例


1.(2022)最高法知民終2799号事件において、法院は下記のように認定した。即ち、揚子江輸出入公司が被疑侵害製品を販売した行為は、商業的な販売行為であり、さらに被疑製品の目録を記載したパンフレットを事件外の人に提供したことは、販売の申出に該当し、他人の科学研究のために特許製品を製造・販売し、かつ代金を得た場合、その直接の目的は科学研究ではなく、使用又は販売であるため、許諾を得ずに製造または販売する侵害行為に該当する。


2.(2020)最高法知民終486号事件において、法院は、傑城公司が係争特許を実施した後に、製品の製造・販売の申出だけではなく、販売も行い、専ら科学研究及び実験のために係争特許を実施した行為ではないため、権利侵害を構成すると認定した。


3.(2014)粵高法民三終字第292号事件において、福特爾公司は無断で係争特許製品を製造したうえ、それをモデルルームに展示したが、そのために関連する準備を行ったことや科学研究を行っていたことを証明する証拠を提出せず、その法人が被疑製品の出所及び用途を知らなかったため、法院は、福特爾公司が侵害を構成すると認定した。


4.(2012)冀民三終字第135号事件において、滄州市農林科学院が生産経営の目的、係争綿花品種を育種し、販売した行為は、法律に規定された科学実験の範疇を超え、育種行為を被疑製品生産行為に変化させたため、権利侵害を構成すると法院が認定した。


5. 「最高人民法院公報」1993年第4期(総36期)に記載の、陸正明が上海工程成套総公司、無錫市環境衛生工程実験工場を訴えた特許侵害上訴事件において、成套会社が係争特許を利用して機械設備を設計・製造した後、環境衛生工場に販売した行為が、権利侵害に該当し、環境衛生工場が科学研究任務を完了した後、侵害製品をゴミ処理のために継続的に使用することは、生産経営を目的とする使用行為に該当するため、権利侵害を構成すると認定された。


(二)非侵害と認定された判例


1.(2016)京73民初994号事件において、法院は、常欣がハルビン工程大学名義で国家自然科学基金を申請した行為、及びハルビン工程大学の学生2名が提出した論文は、いずれも生産経営を目的とした特許製品の製造、使用、販売の申出、販売、輸入行為に該当しないため、権利侵害を構成しないと認定した。


2.(2016)京73民初92号事件において、法院は中日友好病院が係争製品を臨床観察症例に用い、当該製品の肝線維化・肝硬変の程度の臨床診断における安全性及び有効性を研究、検証し、さらに新たな診療方法を模索したことは、権利侵害を構成しないと認定した。


3.(2009)民申字第1532号事件において、法院は、華星公司が3種類の農薬剤型について関連製品の畑試験を行った行為は、特許技術そのものに対して、特許の研究、理解、検証、改良等のため、科学研究及び実験を行った行為に該当するため、権利侵害を構成しないと認定した。


おわりに


以上のことから、上記仮想事例における対象行為には、以下の理由で侵害のリスクが大きいと考える。


(1)顧客に生産能力を証明するための係争特許製品を製造する対象行為は、商業行為と認定されやすく、生産経営に該当し、科学研究及び実験の範疇には該当しない。


(2)対象行為の目的が他人の特許技術の研究、検証、改良ではなく、顧客に認められることであり、当該行為に販売の申出の疑いがある。


(3)対象行為の結果は既存の特許技術に基づいて新たな技術成果を生み出すのではなく、係争特許製品を直接製造したものである。


(4)対象行為が特許技術そのものを対象としたものではなく、当該特許技術の事業予測について研究・実験を行う疑いがある。


(5)対象行為は、発明効果の検証、最適案の確定、専門技術の改善という3つの一般的な科学研究、実験の状況に該当しない。


したがって、対象行為は、専ら科学研究及び実験のために関係特許を使用する行為に該当しないと認定されやすく、かつ、実施者による特許技術の実施行為がその後の事業に関連すれば、ほとんどの場合、当該行為が権利侵害と認定され、当該主張は拒絶されるようになると考える。


出典:天達共和法律事務所 

パートナー弁護士・弁理士 張嵩

弁護士・弁理士 趙凌雲



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