生来、緑や水、生命を呼ぶ体質というのか、そういうものを持つ人間は、稀(まれ)にいる。何だこりゃ。墨(すみ)?あ、そりゃもバッチリと。きみ、五百蔵(いおろい) 森羅(しんら)くん?書簡(しょかん)読んでもらえたかな。なるほど。あれは驚異(きょうい)の造形物(ぞうけいぶつ)だった。へ〜例えば?へ〜こんな人気(ひとけ)のないところに、一人で住んでいるのか?確かに、もしこいつが郷(さと)に住み、人前でうっかりなにかを生み出ししてしまったら、こんな風に平穏(へいおん)には生かしてもらえないだろう。その性質は、あまりに人知(じんち)を離れている。ばあさんっていうのは、なかなか賢明(けんめい)な人だったみたいだな。うん?お前が、書いたのか?
それは、これらがみな蟲だからだ。あ、昆虫や爬虫類とは一線を引く蟲だ。
大雑把(おおざっぱ)に言うとこうだ。こっちの四本が動物で、親指が植物だとする。と人はここ、心臓から一番遠い長指の先端にいるってことになるだろう。手の内側にいくほど、下等な生物になっていく。
辿っていくと、手首当たりが血管が一つになっているだろう。ここらに居るのが菌類や微生物だ。このあたりにまで遡ると、植物と動物との区別をつけるのは難しくなってくる。けどまだまだその先にいる物たちがある。
腕を遡り、肩を通り過ぎる。そしておそらく、ここら辺にいるものたちを「蟲」、あるいは、「緑物」と呼ぶ。生命そのものに近いものたちだ。
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