四川省成都市錦江区のあるコミュニティのレストランでは、「AI調理師」がキッチンで活躍している。スタッフが豚肉の細切り120グラムと刻んだステムレタス150グラム、キクラゲ30グラムなどをそれぞれプラスチックのボックスに入れ、自動調理ロボットに表示されている「魚香肉絲（細切り肉の甘辛炒め）」を選ぶと、ロボットが調理を開始。予熱をして、油を引き、順番に材料を投入して炒め始めると、キッチンには食欲を誘う香りが漂い始める。そして、見た目も香りも味も抜群の「魚香肉絲」がわずか63秒で完成。出来上がった料理はスピーディーに客のテーブルに運ばれていった。
四川省成都市の自動調理ロボットを導入しているレストランのキッチン（撮影・王磊）。
技術が進歩するにつれて、人工知能（AI）が飲食業界で応用されるシーンが増え続けている。例えば、中国初の「食品営業許可証を取得したAI調理ロボット」が最近、北京で登場し、上海の公園では、50種類以上の味のコーヒーを提供することができるスマートコーヒーメーカーが導入されている。確かな腕の「AI調理師」が「ナマズ効果（Catfish Effect、新たな刺激によって既存の組織が活性化すること）」をもたらし、中国の飲食業界の「ゲームチェンジャー」となっている。
上記のレストランを取材すると、活気と熱気に溢れたキッチンでは、自動調理ロボット5台が、焼いたり、炒めたり、煮たり、油で揚げたりといった調理の腕を振るっていた。一方、スタッフ数人の仕事はロボットを操作したり、出来上がった料理を盛り付けたり、デリバリー容器に入れたりするなどだ。スタッフとロボットが共同作業を進めることで、このレストランは1日最多延べ600人の客を迎えることができるという。
客の楊俊飛さんが回鍋肉（ホイコーロー）や麻婆豆腐、酸菜魚（白身魚の酸菜ピリ辛煮）など約10種類の料理を注文すると、食事時にもかかわらず、30分もしないうちに、全ての料理がテーブルにずらりと並んだ。楊さんは、「不思議な感じ。味もいいし、スピーディー。もし言われなかったら、ロボットが作った料理とは分からない」と驚いていた。
辣子鶏（鶏肉の唐辛子炒め）を例にすると、このレストランのブランド創始者・黄天勇氏は、「スタッフが調理すると8-10分かかり、人件費は7-13元（1元は約21.5円）。一方、ロボットならわずか3分半で、その電気代は約0.5元」とそろばんをはじく。そして、「自社開発のこのロボットを武器に、2019年からブランドのモデル転換と高度化を実施し、中国で今、四川料理のチェーン店30店舗以上を展開している。さらに、米国やドイツ、シンガポールにも出店している」と説明する。
ただ、料理が得意という成都市民の羅鍵さんは、「『AI調理師』が作った料理の味は『深み』に欠ける」と手厳しく、「食材に合わせた火加減というのは、たくさんの経験が必要。それによる味の深みというのは、ロボットを使って簡単に再現できるものではない」と話す。それでも、「外食を利用するのは便利でお得だから」と、コスパの高さには満足しているようだ。
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