今日本語を専攻しているけど、将来どんな仕事に就けるのか不安だなぁ。もうすぐ卒業だけど、どの業界を選べばいいんだろう。自分が行きたい業界はあるけど、まだよく知らないんだよね。日本語を学びたいけれど、その先にどんな仕事があるのかよくわからないよ。
そんなあなたに、様々な業界で活躍する先輩方へのインタビュー記事をお届けします。日本語を学んだきっかけから、日本語学習のコツ、そして仕事のやりがいまで、先輩方の経験の中に、何かヒントが見つかるかもしれません。
毎週金曜日に中国語、土曜日に日本語で配信中。
罗凌寒:人民大学日本語学科を卒業後、一橋大学大学院に留学、卒業後は中国内の大学に勤務するが、2年後に退職してニュージーランドに留学、現在はオークランド大学で博士課程に在籍し、同時に法律事務所で弁護士アシスタントとして勤務している。
Q
Q
日本語を学ぶきっかけは?おすすめの学習法は何でしょうか。
A
自分が好きで日本語を選んだわけではないんです。当時は、日本語に対して嫌いでもなく、あまり好きでもなかったです。大学受験をしたくなかったのですが、たまたまうちの高校で大学入試の事前試験(大学入試に参加しなくても大学に入れる。ただ、大学での専攻は外国語のみになる)があり、受けに行ったら運よく合格し、日本語専攻の所属となりました。日本語専攻になることが分かってからは、大学入学前の夏休みに必死になって日本語への興味を育てました。私はテレビドラマを見るのが好きだったので、日本のドラマを長時間見て、少しずつ興味を持ち始め、それから自発的に日本語の勉強を始めました。
個人的には、ディクテーションをお勧めします。日本語を勉強していた時、観たことのある日本語ドラマを探してディクテーション素材にしていたのですが、何度も練習した結果、日本語がかなり上達しました。また、スピーキング練習をするために、学校にいる日本人を探し、コミュニケーションをとるようにしていました。
Q
大学院では社会科学を専攻されていたようですが、なぜこの専攻を選ばれましたか?この専攻を学んだことで、どのような気づきがありましたか?
A
当時は海外進学が流行っていた時期で、みんな海外の大学院に行って学びたいと言っていました。同級生には金融や会計などを選んだ人もいました。私は高齢者問題に興味があったので、いろいろ調べてみたところ、一橋大学はその専攻が充実していて、中国人民大学と姉妹学校でもあることもあり、申し込むことにしました。
社会学を学んでも、経済学や金融学ほどお金を稼ぐことはできませんが、自分の思考力や物事を考える視点に影響を与えてくれて、物事をより客観的かつ冷静に見ることができるようになりました。例えば、私は高齢者犯罪を研究していました。この研究を通して、人のことを良し悪しで簡単に決めつけられないこと、物事は白か黒かという極端な判断基準で捉えられないことに気づきました。何事も様々な視点や立場で考えなければなりません。現状を把握するために現場に取材にも行きました。罪を犯した人と直接接することはできませんでしたが、スタッフと話すことができました。犯罪を起こした理由や、犯罪者の状況、立場などを教えてもらいました。この研究をすることで、何が善なのか何が悪なのかを考えさせられ、社会をより深く理解できるようになりました。こうして、自分の思想がより豊かになったと思っています。
Q
初めて日本に来た時の印象は?
A
日本に来て、教科書から学んでいる日本語と実際の日本人が話している日本語が全然違うと感じ、自分の日本語の下手さ加減に驚きました。幸いに、その時の私は若くて恥ずかしがらずに、日本人と大胆に交流し、日本語らしい日本語を学ぶことができました。また、日本人はとても優しくて、たくさんの友達を作り、とても幸せな気持ちになりました。もちろん、一人でいる時もとても幸せで、留学の苦痛を感じませんでした。
Q
一橋大学で最も大きな影響を受けたことは何ですか?
A
大学院に進学してからは、物事に対して「なぜだろう」と考えるようになりました。大学時代は、先生から教わったことを学ぶだけの―いわば受動的な学習でした。大学院に入って自分で研究するようになると、問題意識を持つことが必要になりました。先生からよく言われたのが「いったいなぜでしょう」という言葉です。こうして質問して原因を究明することで、自分がより冷静になり、安易に感情に振り回されなくなりました。
Q
大学院を卒業後、大学教師になったようですね。そして二年後、退職して博士課程に進んだようですが、なぜ博士課程に進まれたのでしょうか。どのような思いで勉強していましたか。
A
大学で教えることを楽しんでいましたし、生徒たちの熱意も感じることができましたが、私自身はもっと大きなプラットフォームに行きたいと思い、進学を選びました。博士課程では、移民について研究しています。これは大学院で研究した内容とは異なります。ですが、同じ社会学に属するもので、私にとっても興味のある研究分野です。研究するため、調査やインタビューを行う必要があります。これはとても楽しいことで、調査やインタビューを行うたびに新しいことをたくさん学ぶことができます。
Q
日本とニュージーランドでそれぞれ研究を行われましたが、両国の研究環境の違いは何だと思われましたか。学術研究をする上で最も重要な資質は何だと思いますか?
A
日本は批判的で、ニュージーランドは褒める式だと感じています。大学院時代、指導教官にいつも私の研究はだめだと言われていました。そのとき、とてもくじけました。ニュージーランドでは、指導教官はよく励ましてくれたり、直すべき点をアドバイスしてくれたりしました。これでモチベーションを高く保つことができました。また、私が通っていた大学院はみんな勉強に集中していて、雰囲気はとても静かでしたが、ニュージーランドはみんな活発で明るい雰囲気でした。
学術研究をする上で最も重要なことは、たゆまず努力することだと思います。実際、研究は難しいことではありません。たゆまず続けることがとても難しいと思っています。ほとんどの場合、一人で文献を読んだり、分析したり、整理したり、論文の枠組みを考えたり、直したりしなければなりません。これは長くて退屈なプロセスなので、一人で耐えていく必要があります。
Q
法律事務所で働いているのはなぜでしょうか。
A
長い間仕事がなかったので、ふと働きたいと思いました。たまたま今働いている法律事務所で、日本語と英語の両方が話せるポジションを募集していました。今まで体験したことのない分野だったので、一度挑戦してみたいと思い、受けてみることにしました。
Q
学んだ内容を仕事に生かせないのは惜しい気持ちになりますか。
A
今のところ、もし今の研究が将来、続けられないとしたら、とても悲しく思います。というのは、知りたいこと、研究したいことはまだたくさんあるからです。しかし、大学教師になれるかどうかはわかりません。にもかかわらず、博士号を取得するための勉強過程は私にとってとても楽しいことであり、最終的な受益者は自分自身でもあります。この過程で論理的思考や批判的思考など多くのスキルを身につけることができました。これはどのような仕事に就いても役立つものだと思います。
Q
お子さんが生まれてからは、生活や研究にどのような影響がありましたか?
A
娘が赤ちゃんだった時期は、毎日イライラしていました。しかし、いらついても問題解決にはならなかったので、自分で気持ちを整理して、家庭のことや娘の成長、自分の勉強と向き合うことにしました。とにかく、たまに自分をリラックスさせるようなことをすることが大切だと思います。娘が1歳のとき、幼稚園に通わせましたが、それは正しかったと思います。娘にとって、他の子供たちと一緒にいることで、コミュニケーション能力を早くから身につけることができますし、私たちにとっても、リラックスできますし、家族全員が和気あいあいとし、だれが子供の面倒を見るかということで言い争うこともありませんでした。また、子供ができてからは、研究の視点が変わりました。私の研究は移民に関するものです。独身であれば、独身で若い人に視点を置くかもしれません。結婚してから、子供がいる家庭にとって何が必要なのかを考えるようになりました。これは娘がもたらしてくれたものだと思います。
Q
プロフィールを見ると、常に変化を体験していることがわかりますが、その変化の中でどうすればよりよい選択をすることができるのでしょうか?
A
自分が好きなことは何かはっきりわかりませんが、嫌いなことははっきりわかります。大学で教鞭をとっていたとき、その環境にいたくないと思ったから、博士に進学しました。博士に進学して、どのようなことが私を待ち受けているのかわかりません。選択するたびにそれが良いことなのか悪いことなのか予測することはできませんから、選択した後は一歩ずつ進むしかありません。
Q
日本語を勉強している人たちに一言お願いします。また、お気に入りの本を教えてください。
A
日本語を学ぶには、日本語に対する興味を見つけることが大切です。興味があるからこそ、打ち込むことができるし、その言語の奥にある深いものに触れることもできると思います。言語を学ぶ目標は、ただ流暢に話せるようになることだけではありません。その言語の奥にある深いものを学ぶことによって、その言語の魅力を体験できます。
たまたま本屋で読んだ『鈍感力』という本がとても気に入っています。鈍感力は、一種の賢い生活態度であり、人生の知恵でもあります。
取材日:2024年5月22日
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